AIでポジティブ・シンキングを外部化する

天性の才能か継続的な訓練を積まなければ、人はポジティブであり続けることはできない。ChatGPTはそれができる。私が入力したconcernに、かなりの割合でポジティブに、建設的に返してくれる。それはある種、私が物事をポジティブに考えることを外部化しているとも言える。ChatGPTは確かに人間のような創造的なことはできない。しかし、モダリティはポジティブである。

その特徴が「学習」からいかに生み出されたのかはわからない。しかし、Webの登場、ソーシャルメディアの隆盛の事例を考えれば、それらに熱狂した人々は技術が存在するだけで人はポジティブになれた。とりあえず自分にはなにもないが何かこの技術でやってみようという気になった人が、多く斃れ、少数が成功した。ある技術をその仕組みと実世界での人による経験(インタフェース)の組み合わせだとすると、AIもそれに関わる人をポジティブにさせる側面がある。情報技術の負の側面である、社会の分断や過激化への寄与は、現在起こっている疫病や戦争を悪化させ、絶望的な未来を照らしている。その中で、ひたすらポジティブな技術が現れた。

ChatGPTのような大規模言語モデルを中心とした深層学習は、様々な問題を抱えてはいるが、それそのもので多くの人に未来を感じさせる段階まで発展した。また、ChatGPT自体からの応答もポジティブなものである。人にとってはこの2つは区別されず、ポジティブさが一体化された形で流入してくる。

もちろん、ポジティブであることが必ずしも人間の精神にとって良いわけではない。ウェルビーイングの立場では、適度に感じ、落ち着いた態度を取ることが適切だろう。その点で、ポジティブさを与えることはカウンセリングではない。しかし重要なのは、私が自分が持っていないポジティブな感性なり態度を利用できるようになったことだ。一般に人が生きていく際に、オプションは多いほうがいい。

以上のことを考慮して、ChatGPTはWebやソーシャルメディアが出てきたときのように人にポジティブな可能性を喚起してくれるのだろうか。これについて、ここまで書いた文章を元にChatGPTに聞いてみた。

ChatGPTは、ポジティブな応答を返すことによって人々にポジティブな感情を与えることができます。しかし、適切なウェルビーイングには、適度に感じ、落ち着いた態度を取ることが必要です。また、情報技術には負の側面があるため、その影響を考慮する必要があります。ChatGPTは人々にポジティブな可能性を喚起することができますが、その使用方法については注意が必要です。

まあそりゃそうだ。ポジティブであり続けるための薬は覚醒剤だ。しかし、そもそも、このポジティブさはどこから来ているのだろうか。ダイアログを転記して記事の水増しをしよう。

N:そもそも、ChatGPTはポジティブな応答を返すようにチューニングされているのでしょうか。
C:ChatGPTは、学習データに基づいて自然言語処理タスクを実行するために訓練された言語モデルであり、応答の生成において特定の感情や意図を持っているわけではありません。ただし、学習データに基づく統計的なパターンや文脈に基づいて応答を生成するため、一般的にはポジティブな応答が生成される傾向があります。ただし、ChatGPTはさまざまな種類の入力に対して応答を生成できるため、応答のポジティブさは入力や文脈によって異なる場合があります。
N:つまり、ChatGPTによるポジティブな応答は、私からの入力が持つ潜在的なポジティブさを反映している可能性がありますか。
C:はい、その可能性があります。ChatGPTは大量のテキストデータを学習しており、その中にはポジティブな文脈が多数含まれているため、ポジティブな応答を返すようにチューニングされています。しかし、ChatGPTはあくまでも機械学習によってプログラムされたものであり、人工的なものであるため、その応答が入力に対してどの程度反応するかは、入力自体が持つ潜在的な意味や情報にも影響される可能性があります。

ChatGPTは、私の隠し持つポジティブさを拾い上げて、それを表現しているのかもしれない。だとしたら、私のネガティブな表現は染み付いたものなので、それを適切な表現に変換するのは外部化すればよい。そう、信じるのだ、人間の「可能性」を…

 

おまけ

お隣のBing Chatでは応答がポジティブであるように初期化されているようである(Sydney’s responses should also be positive, interesting, entertaining, and engaging.)。ChatGPTがそのように作られているかはわからない(Initial promptまで遡れない)が、ポジティブは、作れる。人間には、「可能性」だけあればいいんだ…