ビジョンを共有したやる気のある人間の製造法
http://d.hatena.ne.jp/kybernetes/20090804
のcomplementとして。
スタートアップの立ち上げメンバーの条件として、「ビジョンを共有したやる気のある人間」を挙げることが多い。
純粋に実用的な理由としては、つまり少ないメンバーが逃げるリスクの回避や、情報の共有、極度に高いモチベーションの維持などが挙げられるため、十分に合理的だろう。
一方で、このような人間は製造可能である。つまり、「幸運にもそういう人間に巡り会えた」などといった属人的な理由ではなく、そういう資質を保った人間を育てる環境を設定できるということだ。本記事では、その極端な例を扱う。
ビジョン:知識による、理解可能な範囲の拡張
「俺は技術以外はわからない」という人間は、ビジョンを共有していないと言えるだろう。ならば、「ビジョンを共有する」とは何か。これは、文字通り相手にコンセプトが伝わるということだろう。スタートアップの経営者の資質として、プレゼンテーション能力は必須のものである。そのプレゼンテーションの第一の目的は、ビジョンを誰かに伝えることである。
では、数少ない「ビジョンを共有した人間」として誰かが位置づけられるのはどういう状況か。これには二種類がある。
- 相手とたまたま馬が合った
- メディア論やマーケティングなどに関する知識があり、プレゼンテーションを理解する能力が高い
通常、ビジョンの共有は前者を意味するが、これは偶然である。一方、知識や教養を元に理解する場合は、その知識は体系的に学ぶことができる。そうでないなら、それは「研究」と呼ばれるだろう。
やる気:破滅による生存願望
通常、やる気を生み出す手段としては、
- 金
- 自己実現
- 人間関係による充足
などが挙げられるだろう。しかし、これらのインセンティブとは全く別で、他の何よりも強力なものも存在する。
それが、生存願望、つまり「このままでは死んでしまう」ということだ。これは日本に住んでいると意識しないことが多いだろう。しかし、日本でも虐待、失敗、奸計などで容易に生きるか死ぬかの状況に陥る。その状況では、手段は選ばないし、当然全力を尽くす。発展途上国でのベンチャーが流行している国では、生きるか死ぬかの人間が多いという背景もあるだろう。これは根本的にネガティブなモチベーションである。常に死を意識するためである。ちなみに、子育てをするなら、生存願望を植え付けるのは簡単である。虐待すればいい。
知識がある生存願望のある人間は、適格か?
さて、この2つを総合すると、
- 知識を体系的に学んだが、生きるか死ぬかの状況の人間
が、相当程度の確率で「ビジョンを共有したやる気のある人間」になることになる。こういう人間は、下手をすればただの生活能力のない文系崩れなどとも解釈できるだろう。また、そういう人間は「コンセプトに特別強力な興味があるわけでもなく」「インセンティブにも関心がない」可能性がある。そういう人間を「通常の」「ビジョンを共有したやる気のある人間」として扱うべきかどうかは、疑問が残る。もっとも、アウトプットは変わらないだろうが。