コンピュータに関する知識が枯渇したので勉強している

 3D地理空間情報(点群)+AR+土木という,一見典型的に見えてあまりそうでもない仕事をしている。モバイル環境でのAR技術は,恐らくこの10年で,今普及しているものよりも計算量の面,データの面で圧倒的にリソースを食うようになるだろう。その一端に触れている。

 このため,今年度研究開発からプロダクションレベルに移行するにあたって,基礎的なCPU,メモリ,I/Oなどがボトルネックになった。そもそも今存在するタブレットなどは,それ自体で高度な計算をするように作られていない。その中で様々なボトルネックが発生し,それはアプリケーションのレベル(React Native for Windows+WebView(edge)+Three.js)で対応できたり,OS/ハードウェアのレベルで対応できたり,対応できなかったりした。

 関連各社で性能的に厳しいことをしているという認識は共有されているため,顧客に「強い」エンジニアが付いたようだ。下請けという関係上コミュニケーションは制限されていたが,「強い」ことは明らかだった。

 この状況下で,ある機能でパフォーマンスの問題が起きた際に,私の力量のなさが浮き彫りになった。正直アプリケーションの方では対処のしようがなく,調査結果の回答にあぐねていた。その間に,「強い」エンジニアからOSレベル,CPUレベルのサジェスチョンが来た。

 結果的に,これに関してはOSレベル,CPUレベルでなにかしても顕著な改善が見られず,妥協するしかなかった。しかし,これは私に強い危機感を与えた。一応私はそれなりに技術があるということで雇用されているが,勤怠を守ることができず,人と対面で喋ると負担がかかり,最悪の場合倒れてしまうのでほぼリモートワークである。なので,技術を失うと即仕事を失うことにつながる常に背水の陣である。そして,私に基礎的なコンピュータサイエンスの知識がないことが露呈した今,その陣の一つが崩れた。検査通ったから良かったねではなく,OSやCPUに立脚した議論ができないことが露呈したことが問題である。そして,こんなニッチな仕事には,転職先がない。死だ。死。

 オープンソース技術を活用するということは,むしろ基礎的なコンピュータに関する知識を要求する。ソフトウェアの内部がブラックボックスになるためだ。最終的にはOSやCPUなど,ソフトウェアの実行環境の仕組みについて理解する必要がある。

 私は東工大附属高校から電通大の情報通信工学科に行ったが,3年次で身内の不幸により精神が弱りドロップ・アウトし,社会学に行ったところ働きながら博士課程をするところまで行ってしまった人間だ。コンピュータサイエンスへの興味関心はあったし,高校3年あたりから大学のシラバスを参考に独学しようとして撃沈し続けていた。「コンピュータサイエンスのカリキュラムで何を学ぶか,学んだ人間に何ができるか」は知っていても,やってはいない。だからわかる。私には知識がない。

 とりあえずどこか都内の大学院を受験することを検討した。東大,東工大JAIST電通大放送大学(一見して本格的なコンピュータサイエンスはできなさそうだが,実際はやろうとすればいろいろできる)を検討し,サイコロに割り当てて振ってみたら東大が出たので「ハアー」と思いながら東大の情報理工学系研究科の入試情報を見た。過去問を見た瞬間私は不合格した。

 しかし,東大のサイトで得たものは大きい。

www.i.u-tokyo.ac.jp

お前らウチに来るならこれ読んどけという書籍が並んでいるのだ。これを理解すれば,とりあえず面接の際に「君は教養がないようだねェ」と1人の教員が言い,他の教員が「ハハハ…ハッハッハッハッ…いやすみませんねえハッハッハッハッ!!!…あ,君まだいたの,わかっているでしょう,帰りなさいよ」と言われる危険はなさそうである。人は,クズをみたら笑う。そこに礼儀は関係ない。

 そしてもう1つ。少なくともアルゴリズム形式言語理論,計算機アーキテクチャに関しては私が高校3年の頃,17年前と教科書は変わっていない。つまり,挫折しながら積み上げてきた経験を途中から引き継ぐことができる。OSに関してはタネンバウムの諸書籍よりこちらがいいだろう。論理学に関してはvan Dalenは全く定番で,ちょこちょこ学んでいるので普通に続ければ良い。ということでこれらを教科書とする。

 大学院に話を戻すが,実際のところ社会人院生を続けている身としては,正直もう金が無い。また,フルコミットもできない。なので,実質的に放送大学しか選択肢はない。単位も取ってあるというアドバンテージがある。研究テーマをコンピュータサイエンスの知識を総動員する必要があるように適切に選択すれば,つまりある種「教育的な」研究テーマを選べば,実際に手で動かすことで理論をより理解できるだろう。実際にどうするかは8月までに決める。

 私の「末路」を暗示する記事を見た。

gendai.ismedia.jp

低体温はあるし,セルフ・ネグレクトも疑っている。このくらいまで生きるとすると,最大であと15年生きることになる。それまでにどうあがけるかというと,今は知識が必要だ。

メモ:

MSc Computer Science Online - York – Study Online