弱者からの成り上がりという繊細さを欠いた論議

成り上がる手段としてのマイノリティー属性ないし弱者利権
http://d.hatena.ne.jp/lakehill/20080508/p1

で、なんかニートスズキニートから成り上がってニートじゃなくなってるみたいなのをブクマコメでも記事でも見るのね。

ニート鈴木も体よくタレントになれたけど、もはや"ニート"を名乗るのは詐欺に近いんじゃないのか? 当たり前だが、ああいうのをニートの代表だと思ってはいけない(そもそも英国で元々使われている意味で言えば大学を出ているのにニートというのがおかしいのだが)。病気や障害などのやむえない理由でニートをしている人達だっているのだ。みんながみんな好きこのんでニートをしているわけではないのだ。
http://d.hatena.ne.jp/lakehill/20080508/p1

いや、ニートとしてのネット活動は相変わらずだし、イベントだけでは判断できないでしょ。ロフトプラスワンなんて25万あれば誰でもイベントができるわけで。そのほかの個人の活動はといえば、4月のはじめの花見では俺しかこなかったり(しかも帰ろうとしてた)。1月の酒動画のイベントに来ていたときの鈴木さんはだいぶ謙虚だったりと、まあ大物になろうというような行動じゃない。sirouto2のエントリでのイベントの彼の発言とかニースズの初期のブログとか見ればわかるけど、彼は最初からワープア的な理由ではなくしてニートになったわけで、何かいい機会があれば働くのは当たり前とも言える。だから、どうも的外れにしか思えないんだよね。少なくとも一般人が「ニート」と考えている像をちゃんと表現して、提供できたと思うよ。


そもそも、国内でニートの問題系とされているものってもっと広い文脈で見なければならないわけで、ワープア的な貧困の文脈だけではぜんぜんわからない。それが国内の「ニート」概念のある意味醍醐味でもある。また、ニートに関する言及の流通、名乗りも情報化で相当繊細な議論が必要になっているわけで。それを「食い物にする」みたいな画一的な書き方をするのはいただけないよ。「雇用」「労働」ではない仕事の仕方が勃興しているということの、肯定的な例だという見方もできるわけで。俺が見たところでは、「これだから保守左翼は」と思うだけなんだよね。なんか、それ系の人って雇用に異常なほど執着して、フリーランスとかの話をすると「彼らは特殊だから」と言って逃げる風潮があるし。あと、本当にワープアの方が日記タグで何人もいるわけなんだけど、そのあたりはどう説明するのかな。


むしろ、この記事の文脈で適切にたたいていいのは、雨宮処凛とかそのへんじゃないの。何が「オールニートニッポン」だ。


あと、続きのエントリ

で、非モテの場合はどうなの?
http://d.hatena.ne.jp/lakehill/20080509/himote_riken

でも知り合いについて書かれていた。つまるところfurukatsuのことなんだけど、一度彼とは話したことがある。というのも外山さんとかが都知事選に出ていた時期に左翼飲み屋界隈の飲み会で「革命的非モテ同盟とか死ねばいいと思う」と言ったら次の日に本人がいて、一応彼には興味があったから話したわけ。俺の主張としては「この運動で何を達成したいのかというのがぜんぜん見えてこない」というものなのだが、それを突き詰めて、そもそもどんな問題意識から始まったかを追求すると、比較的最近の彼のエントリにもあるので書いてしまうが、「好きなあの人が〜〜」と来たのね。

俺はその発言自体でいろいろ思うところがあり、あとで少し暴れてしまったのだが、それは置いといて、こんな彼が成り上がりを目的としていたわけがないよね。組織内で利己的に振舞って結果失敗したなんてものではなく、そもそも最初から彼は不器用だったってこと。だから俺は彼のことが好きなんだけどね。

まあここまで見てきて、結論は、多分この記事を書いた人の主要な問題系は弱者の問題だと思うんだけど、そこから「成功した人間は目的を持って成り上がった」みたいな仮定を導入してしまっている。でも、そもそも問題を解決しようとしている側としてはこの態度はどうか、と思うんだよね。まず現実を見ようよ。そこから解決策を見出すほうが、可能性も広がって面白い議論になる。