Webはインターネットキチガイを生産する

ここでいうインターネットキチガイとは、既存の流行や人づての情報に頼らず、ブラウザを活用して過去未来関係なく自分にとって新しい情報に触れる人間を指す。彼らは、人と解離したものの考え方をする点でキチガイであり、ネットに紐付けられている点でインターネットキチガイである。ネットユーザーの範疇なら90年代から存在する一般的な存在だが、インターネットの外ではただのキチガイである。

Webは、MEMEX以降の「人間の思考を補助する道具」という目論見の見事な成功例だ。しかし、既存の時間感覚から解放されて、自由に得たい情報を得るという、彼らが理想としたコンピュータとのかかわり方は、同時にビジネスや個人的なコミュニケーションには非常に親和性が悪い。

ビジネスの場合は、トレンドというものが非常に重要となる。トレンドを皆が知っていればコミュニケーションも一言二言で済み、それに少し加えるだけでいい。また、共通のバックボーンがあって初めて競争というものは成り立つ。広告も、多くの人に伝えるにはわかりやすい情報が必要だ。

個人的なコミュニケーションには、共通の話題というものが非常に重要となる。これがないと、人とわかりあって仲良くするという至上命題の達成が難しくなるし、人は興味がないものに長ったらしい説明を聞こうとはしない。

これらの理由から、インターネットキチガイは多くの、いやほとんどの場所で忌み嫌われる。また、Webのそのような側面を排除して、ビジネスや友人関係に役立てるためには、思考を補助する道具という側面は無視して、別の使い方を見出さなければならない。その一つがコミュニティだ。

さて、Webはその構造上インターネットキチガイを常に一定数抱え込むことになる。検索、リンクによって、常にトレンドから離れた情報にたどり着ける状態にあるからだ。それを有効に活用していく道があるとすれば、ビジネスや友人関係とは違ったものになるだろう。だから、インターネットキチガイが面白いアイデアを持っていても、それを友達に話したりベンチャー企業に持って行ってはいけないのだ。

競争をしない、人と協力もしない、そのような状況でどうアイデアを活かしていくとしたら、どのような方策があるのだろうか。(多分続く)