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SAO 劇場版の地理空間情報的な見どころ

話の本筋のネタバレはないと思います.シン・ゴジラを見る際に行政学をやっていると思うところがあるよねーという程度の話をします.観たあとに読んでも,観る前に読んでも知見はあると思います.ただし一般には観てない人は観てからの方が良いと思います.

お前誰よ

地理空間情報,ARアプリケーション開発者です.総務省聖地巡礼は数回しました.ネタ本があるので2016年くらいまでの最新事情は追っています.土木,インフラに関するアプリケーションなので,様々な職種のチームワークによって現場が成立しているという観点では,私は「土方」だと思います.

見どころ1:基礎的な空間情報

SAO 劇場版が AR に関するものだということは公知だということにします.基本的に,一般的な現在の視覚 AR に対する印象は,以下の2つに分類されると思います.

  • (マクロ)GPS による緯度経度情報に基づいたマッピング
  • (ミクロ)カメラ画像からの特徴認識に基づく現実世界へのマッピング

これに対して,最近の動きとしては,空撮や Google StreetView カーの拡張で,レーザーとカメラで現実世界を数cm~m単位で取得しています.これが基盤として公開されたら,マクロとミクロの境目はなくなります.その中でも写真測量をやっている会社のノウハウは強いです.アジア航測が東京を特殊機材を使った空撮で3Dにしたのですが,これはシン・ゴジラの東京駅のシーンで使われており,あれは実は空撮ではなく全部3Dです.さすがに東京駅周辺の3Dモデルを全部作るのは手間なので,駅周辺の倒れる建物だけを組んで,後はアジア航測のモデルを使っています.しかし,違和感を感じた方は少ないのではないでしょうか.違和感を感じた方は映画を見ることに向いていないと思います.

まあ買いましょう

で,まあ現実世界の3Dモデルを作るのには当然精度の限界があるのですが,SAOの映画版では凄いごまかしが行われています.つまり,現実世界の3D空間に覆いかぶせる形でゲームの3Dモデルをレンダリングしています.これなら,ピッタリ合う精度でなくても,現実世界の物体に当たらずに安全にゲームができます.例えば実世界を計測した3Dモデルと現実が20cmずれているとして,ARで見せたいモデルに50cmバッファを持たせれば現実の物体には当たりません.ハッキリ言ってこの発想はすごいと思いました.また,コンテンツは今の VR コンテンツを作るのと同じ方法で作れます.

当然日本の道は狭いので,多くの道路では50cmも削られたら話にならなくなると思うのですが,恐らくSAOの世界ではARを使える部分と使えない部分がハッキリと分かれています.というのも,既存のスマートフォンタブレットが使われているシーンと,ARが使われているシーンが分かれているためです.

見どころ2:ドローンなどによるリアルタイム空間情報測定

この映画で一番気になっていた部分が,戦いのシーンをどうやってARで実現しているのだろうということです.デバイス側で人の動きを感知するセンサーとしては,スマートフォンにあるように加速度センサーやジャイロ,地磁気センサーなどがありますが,全力で剣を振り回すとブレます.そこの問題はある程度解決されていて,手に持った棒状のデバイスが武器になるのですが,あれは恐らくPlayStation VRの棒の延長だと思います.あの棒はアイドルマスターシンデレラガールズをやればわかるのですが,かなりの精度で追ってくれます.

しかしながら,それは棒を持っているユーザーにとってのみ位置が合うのであり,人と人が剣劇をやる際は不十分です.なので,外部から空間情報を送ってやらないといけないのですが,その辺の描写もしっかりしています.ボスが出てくる場所でドローンが動いているのがその証拠です.あれにはカメラと恐らくレーザーがついており(これ以上の情報は本編のネタバレになります),リアルタイムで空間計測に加えて人間を感知しています.カメラのフォーカスが動いている描写があったので,被写界深度を使っているか,全員にフォーカスを合わせて顔認識や人物認識をやっていると思われます.作中でディープラーニングという言葉が出てきて,まだ使われてるのかよと思いましたが,我々は2004年くらいに生まれたソーシャルメディアという言葉をまだ使っているので多分そういうものだと思います.もっとも,それで剣劇に使える精度が出るかというと微妙ですが.複数のドローンが飛んでいるので,それらを協調させて精度を出しているのかな.あとは室内,ショッピングモールや駐車場については多分監視カメラ周りに空間情報を取るセンサーがあるんでしょうね.

結論

劇中の,2026年にARゲームが普及するというのは,それなりにリアルだと思います.精度を上げる方法はまだまだあるので.ただ,地理空間情報屋としてはごまかしてゲームにしてパッケージングするという才能は全く無いので,クッソーうらやましいと思う限りです.あと,本職の研究者の方が見たら突然今実現できるよと言いだす可能性もあります.私は所詮後追いで金貰ってやってるだけなので.あと,ARは視覚だけじゃなくていろいろあるだろ,という良くある批判については,映画を観てください.

見どころ3,4があるのですが,仕事で応用が効くので非公開とします.