ポケモンアートアカデミーについて

中学時代,美術の成績は常に1だった.「自由に描いて下さい」と言われても人より不器用で下手で,一定以上の独創性も許されなかった.結局絵は全く巧くならず,俺は自分に絵など描けるわけがないと思っていた.内申点にも響いたため,都立ではなく国立の高校に行き,美術は選択科目だったため音楽を選んだ.それ以来絵らしい絵は描いていない.だいたい最近描いた図はこのようなものだ(International Space Apps Challenge におけるブレインストーミングの図).

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デスマーチと呼ばれうる仕事を先日までやっていて,ついに耐えられなくなって欠勤を申し出て(そのまま抜けた)みなとみらいに行った.海を見に行くためだ.海は良く,外の世界を否が応でも見せてくれる.その間に,ランドマークプラザポケモンセンターがあるのに気づき,寄った.ポケモンセンターの入り口が見えた瞬間に,涙が出てきた.俺は一体何をやっていたのだろうか.フォッコのぬいぐるみを買って,帰りの湘南新宿ラインで対話をした.

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次の日,最近のポケモン事情について調べていたら「ポケモンアートアカデミー」が発売したのを知った.存在については知っていたが,ことさら関心はなかった.しかし,どうも魅力を感じたのだ.ここ数年で,コンピュータによる学習は,従来の学習と明らかに違うということを体験した.例えばTOEICをやった際,分厚い本を買ったが一切開かなかった.しかし,Nintendo DSのソフトでやったら,相当程度の時間を学習に割くことができ,100点程度上がった.また,近年ではCourseraなどのMOOCの科目を受け,いろいろ学んで役立てている.

そういった事情から,もしかしたらコンピュータによる教育なら自分にも人並みではないにせよ絵が描けるのではないかという思いが浮かんだ.その時,俺はデスマーチにより自分の拠り所としていた技術にすら疑問を持っていた.何もやる気が起きなかった.だったら,最初から全然駄目な絵でもやってみるのがいいのではないか.すぐさまダウンロード購入した.

最初はトレースからだった.トレースでもうまくなぞれない.美術は円を精確に描くところから始まると小耳に挟んではいたが,こんなに大変だとは思わなかった.コースを進めるに連れ,線の微妙な違いによって表情や印象までが変わることなどを徐々にわかっていった.

好きなフォッコを描き始めた時に,悩みが始まった.トレースから外れることは間違いではない.むしろ重要なのは,そしてそのポケモンのどこに魅力を感じるか,すなわち欲を重視しなければならないことである.残念ながら,フォッコはうまく描けなかった.お手本の角度が絶妙で,少し曲線が変わるとすぐに優しい表情から硬い印象になってしまう.それはフォッコ自体の難しさでもあるのだが,ともかく自分の欲に正直に,向かっていくしか無い.

仕事をしながら合間にやっているうちに(自宅勤務である)ビギナーコースの終わりまで来た.修了試験があるらしい.ピカチュウだった.ピカチュウにおいては,詳しいインストラクションは意図的にせよ意図せずにせよ省かれていた.ピカチュウが画面の外の俺に振り向いてくれ,親しみを示してくれるにはどうしたらいいか.俺は全体の完成度を高めるより,指先や耳について調整を重ねた.結果としてちょっとどうかという感じにはなったが,少し心が触れ合った気がした.

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ポケモンアートアカデミーに出会ったのは良かったと思う.まず自分が描くことでかわいいポケモンが出来上がるということが良いし,癒やしを感じる.そして,描くことで自分の欲に直面し,自然に受け入れることができる.これは,俺が求めていたものだ.絵を描くのは良いことだ.