「実名/匿名」ではなくて、「特定可能/不能」という軸で考えてはどう

近年、「つこうた」やら「特定した」やら、匿名掲示板の人々が、何の変哲もない人を潰しにかかっているのをよく見かける。見たことない人ははてなブックマーク注目エントリーを1ヶ月追うといい。だいたいそのくらいのペースで、個人情報を根こそぎさらされた人間を見る。

その中で、単に匿名にしただけでは、身の危険が守れないという問題がある。Google Street Viewなどでパブリックな情報がどんどん集積されていくほか、ソーシャルメディアで人間のつながりがある程度可視化された時代になった。自分だけのプライバシーをコントロールできたとしても、数人、数情報たどればすぐに実名、住所、職場などのコアな情報の一つくらいはもれてしまう。

一方で、ある程度有名になっても特定されない種類の人間がいる。恐らく本人に関するコアな情報が「まったくない」ということはないが(会社情報のウェブサイトがない企業は少ない)、それと本人の情報発信の間のリンクがどこかで途切れているのだろう。例えば、実名は、ばれたところで、職場や住所を探すのは意外に難しいので、そこまで危険ではない。現在の特定技術は、まだ警察や公的機関をうまく利用する段階にはないからだ。また、どこかで匿名、どこかで実名で発信をしていたとして(論文とかは実名と職場がリンクしちゃうよな)、どちらの情報もネットにはあるが、匿名側で何かしても、実名方面とのリンクがなければ、特定には及ばない。

ということは、ネットのプライバシーは実名か匿名かというのはあまり関係なく、特定できるかできないかという方をみたほうがいいのではないか。「実名を出さないために注意すること」と同様、「特定されないように注意すること」も一定の方針があるはずなので、それをケースから調べていって、ガイドラインを策定するのが建設的である。

例えば、こんなようなものだ。実名で書いている文書や、ウェブスペースのアカウント名を、ネットのハンドル名と同じにした場合、実名側、匿名側双方にリンクを与えることになる。ちなみに、私はもうやってしまったので問題ない。アカウント名は意外に重要で、たとえば2つのアカウントを使っていた場合、どちらかのアカウントで短期的な炎上をした場合では、もう一つのアカウントに飛び火しないこともある。もちろん、本気で相手がこちらを特定しようとした場合は対応できないが、ある程度の指針にはなる。

これは、単に個人とネットの関係ではなく、人間関係、実世界での位置などあらゆる側面が関わってくるため、難しい問題である。恐らく不正アクセス禁止法のような具体的な法整備はされるだろうが、数年間は自身で防衛しなければならない。そのためにも、ノウハウを貯めていってはどうか。