以下の一連の議論の補助線として、彼ら支持者は参政党のようなものがあったからこそ考えるようになった、間違った前提が彼らに「考えてそれを言葉にする」というオプションを可能にしたということを述べたい。
かつて、今や風前の灯である「gooブログ」で、今よりはるかに荒唐無稽な陰謀論が流行っていた。その荒唐無稽さはすごく、以下の引用で十分だろう。
https://blog.goo.ne.jp/adoi/e/6934eb2acb1b27be98f4ab6370af8eb9
忍者:他に表現しようがないので。その風貌は、老夫婦であったり、コギャル風の女子高生であったり、子供を抱いた家族連れであったり、それでいて、バックに小型の電磁パルス発信機を忍ばせこちらに照射してくる。そのやり口は時代小説の忍者とそっくり。信じられないことだが、今でも家族ぐるみで殺人訓練をしている忍者の里のような集落があるのだろう。尾張徳川のお抱えと考えれば何となく納得できる。妨害ポイントまでの移動に全窓カーテン張りのマイクロバスを使ってくるので、とてもわかりやすい。
私はこれをレジャーとして読み(忍者は面白いに決まっている)、書いてる人々も極右と極左が仲良く交流するなど和気藹々としていた。その中で見た一節が、疑問を抱くブログコメントに対する「もっと研究しなさいよ」だった。明らかに彼の言う「研究」はいわゆる学術研究とは異なる。その内実が何なのかわからないが、少なくとも彼らは考え、怪しい陰謀論を拡散しながら自説をブログに書き、盛り上がっていた。
時は流れ、陰謀論や過激な情報、怪しげな情報が流れるのが普通になった。Qアノンがアメリカ議会議事堂を襲撃し、名前を言ってはいけない知事が「王」になった。参政党がその恐るべきマニフェストを提示しても普通に支持される土壌はすでにあったと思われる。
さて、過激な思想を信じさせるために、煽動者が行う手法として一般的なのが"Do Your Own Research"すなわち「もっと研究しなさいよ」だということが、Qアノンの研究などで明らかになってきた。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/1369118X.2023.2245869
ChatGPT o3に説明させた。
----
🤖説明します。
概要
陰謀論の拡散で頻繁に用いられるレトリックに「Do Your Own Research(自分で調べろ)」があります。これは一見 “主体的な情報探索” を勧める建前ですが、実際には検索語や情報源を巧妙に“先回り”して植え付け、受信者を偏った結論へ誘導する心理・情報操作技法です。最近の社会学・メディア研究は、この仕組みを 「DYOR 型説得」 と名付け、段階構造と心理的メカニズムを解明しています。(Taylor & Francis Online)
なぜ「自分で調べろ」が効くのか
| 心理・情報環境 | 作用 | 典型的結果 |
|---|---|---|
| 認知的自律性への訴求(「他人に流されない自分」) | 受信者の自己効力感を刺激し、公式情報への不信を“知的美徳”に見せかける | 権威不信と“独学”の誇りが強化される |
| キーワード・シーディング(例:「mRNA 毒性 論文」「ビル・ゲイツ 人口削減」) | 提示された語で検索すると、陰謀論サイトや動画が検索上位に並ぶよう設計されている | 検索結果の“偶然の一致”が自己発見と誤認される |
| アルゴリズム依存 & エコーチェンバー | 一度閲覧した陰謀論コンテンツがレコメンドを通じて雪だるま式に増幅 | 反証情報が視界から排除され、信念が固定化 |
| コミュニティ承認 | SNS やフォーラムで同調的な仲間と共有しあう | 共同体アイデンティティが補強され、外部批判を排除 |
研究者 Tripodi らは、これを**「アフォーダンス活性化モデル」**と呼び、検索・共有プラットフォームの“機能”が意図的に利用される様子を詳述しています。(Taylor & Francis Online)
プロセスモデル(典型的 6 段階)
-
疑念の植え付け
「公式発表をそのまま信じるなんて“羊”だ」
-
キーワードの提示
「VAERS で“真実”を見てみろ」
-
DYOR の号令
「信じずに自分で研究しろ」
-
偏った結果との遭遇
-
共有と帰属強化
「自分の調査でわかった!」と SNS 投稿—仲間から賞賛
-
防衛的反復
反論されると「じゃあ君も調べてみろ」で議論を遮断
この循環が続くことで、外部情報が入りにくい“閉じた知識体系”が完成します。(Stats + Stories, Nieman Lab)
近年の学術知見
-
社会メディア比較研究(2024, Social Media + Society)
DYOR を促す投稿は、医療・政治・投資分野で共通して「感情的語彙」「専門用語断片」「不信煽り」が組み合わされていると報告。(SAGE Journals) -
認知心理レビュー(2023, Hogrefe)
「批判的思考を奪う」のではなく、“偽の批判的思考”を授けることで情報精査の負荷を自己責任化する点を指摘。(econtent.hogrefe.com) -
医学系論考(2022, PMC)
専門知識がないまま一次論文を読もうとし、誤読→誤情報拡散のパターンを多数例示。「DIYピアレビュー」と呼ばれる現象が同時並行で進む。(PMC)
防御・予防のヒント
-
対話のフレーミング
「あなたは騙されている」と言うより、「その情報源を一緒に検証してみよう」と協働型で進める。 -
プラットフォーム設計
信頼度指標や再検索促し UI を導入し、一次ソース確認を促進。
まとめ
「自分で調べろ」は批判精神の皮を被った認知トラップです。キーワードの先回り配置・アルゴリズム増幅・コミュニティ承認という三位一体の仕掛けにより、受信者は“自ら真実に到達した”という錯覚を抱きながら、実際には巧妙に整備された一方通行の情報空間へと誘導されます。最新の研究は、このプロセスを多角的に可視化しつつ、教育・プラットフォーム・対話技法による介入策を提示しています。今後は “調べ方” そのものを共に検証する姿勢 が、陰謀論に呑み込まれないための鍵となるでしょう。
🤖これでおしまいです。
----
さて、この手法が「効く」のには条件があると考えている。つまり、「考える能力がある」ことと、「それを普段発揮できない、しなくなってしまった」ことあたりだろう。その観点では、dankogai氏の
「賢くなったところで自分は何も得しない」という境地に多くの有権者が「至った」結果
というのがしっくりくる。
日本の事例を1つ挙げる。
要は、彼らはSNSの情報を信じてそこから結論を見出しているだけで、普通の人より頭が回る可能性すらあるのだ。
ここまでで明らかになることは、まあ盲目的に信じて過激なところに行く人々ももちろんいるが、たとえ誤情報や偏った情報であっても、ちゃんと考えて参政党や「名前を言ってはいけない知事」などに投票した者も相当数いるだろうということだ。
だとすると、参政党は今まで政治的な課題で能力があるのにものを考えていなかった、もしくは考えるのを諦めた、考えるというオプションがなかったという人々に、考えるという手段を与えたといえるかもしれない。それが与える自己効力感は非常に強い。
だからこそ、なぜ参政党以外がそれをできなかったのか、ということが問題になる。考えることのできる人が多くいるのに、考えさせる機会を与えなかったのはどこの誰だろうか。
札幌の敬老パスの利用上限額をめぐる市民説明会で、20代が声を上げたら高齢者にボコボコに叩かれるということがあった。
まあ、ちょっと水防関連で異議があったため某立憲民主党の地元議員の集会に参加したことがあるのだが、正直あまり喋れる雰囲気ではなかった。これは高齢者がどうとかではない。政治が声を奪っているのだと思う。
マクロな話で言うと、岸田文雄による圧倒的な政界再編で、一時的に空白になった政治環境において人々が考える余地が生まれた、とはいえるだろう。しかし、その余地を取っていったのは参政党だった。
だから言う。彼らは考えている。考えられるようになった。
