人生表について

 これですが,どうやら以下の方が作った表のようです.

人生表をつくるということ - 父娘の記念受験

 この著者の方は,自身が中卒で厳しい人生を送っているため,娘には良い人生をということで桜蔭を受けさせることを決意し,この表を作って士気を高めさせていたようです.それを一種のストーリーとして本で出したとか.

 はっきりいいますが,このような試みは一切の美談でもないし,「人生のうちの1つの良かった経験」となる保証もありません.何も考えていなかったのでしょうか.

 私は,10歳当時母と夜逃げして祖母の家におり,今は母も祖母も看取って一人で暮らしています.母は高卒で学歴にコンプレックスを持っており,私がたまたま塾の入塾テストで最高クラスに入れたためやっていく気持ちになってしまい,「人生表」にあるような人生を叩きこまれ,開成と筑駒を受けて落ちました.城北は受かったのですが(大したことないですが東大受験強豪校です),「金がない」という理由で入学を辞退し,中野区・杉並区で最も荒れた中学に入学しました.

 そこで気づいた.母親にライフプランを見据える視点などなかったのだと.その後母親は持病のてんかんが精神病を併発してしまい,私の受験の他に祖母の数千万の借金の処理をした挙句.中1の12月に狂ってしまいました.私はグレて家に帰らないようになり,勉強もしなくなり不良と交遊しながら図書館でコンピュータの書籍を読み漁り,情報工学Linuxを覚えて親からもらった塾の交通費でインターネットカフェに入り浸っていました.初日の出暴走には行きませんでした.塾には所属しており,偏差値も総合で72,英語に限れば75程度あったようですが,もはや受験には興味がなく,筑附に落ち,一応国立の東工大附属というところに行きました.

 自分語りはここまでとしておいて,カッチリとした人生表なんかを子供時代に作るのは,それに失敗した場合にその人生表,世界観といってもいいかもしれない,から落ちこぼれるという経験,無駄な経験をさせることになります.これを子供にやらせるのは精神によくありません.正直言って,この著者の娘もどう思っているかどうかわからないと思います.まだ「お前はこんな家に生まれたからダメだ」と言われたほうがマシだ(マシというのは必ずしも良いことを意味しませんが).

 例えば本気で将来を考えるなら,最も娘の学力に適した現実的な受験戦略を立てたり,落ちてもちゃんと自信を持って勉強を継続できる環境を作ったりすることが適切ではないでしょうか.本なんて書いている暇はありません.この人がやっていることは,偽善です.重要なのは,落ちこぼれないように支え続けることです.あなた病気もない健康な父親でしょう.なんでやらないんですか.こういう表をつくるなら責任持ってくださいよと言いたい.

 「人生表」そのものの内容については,ノーコメント.まあ皆思っているのと大体同じ印象でしょう.こういうのはファイナンシャルプランナーに書かせたら良いのでは.

 余談ですが,今度慶應義塾の博士課程を受験します.その動機の中には中学受験から18年溜め続けた学歴コンプレックスがあるのかもしれません.もちろん別の動機が主なのですが,こういう過去の遺物が残っていても特に気にしません.