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Make Culture と人々の実践の研究の領域

 どうもまとまらないが,まとまらないがゆえに価値がないので投稿する.今日,エンターテインメントコンピューティング2014というものが行われているが,ここ数年のインタフェースやヒューマンコンピュータインタラクション研究では,研究成果を一般に公開する風潮がある.EC2014もデモ公開を行っており,家から徒歩10分のところにあるのだが,どうも行く気になれないので会場が目視できる芝生でくつろいでいたが,結局行って発表を聴いている.
 研究成果のインタラクティブ展示の背景には,インタラクション研究と社会を接続する2つの潮流があると考えられる.1つが,ストレートに一般に触れる場所で学会をやろうというもので,なおかつそれができるようになったということである.通常,専門的な学会発表は一般の人にはわからない.しかし,インタラクション技術は人が直観的に触れられることを目指しており(というか,それができないと失敗である),そのため展示することで一般の目に触れることができる.これが大きなアドバンテージになる.
 もう1つが,研究者とそうでない人の垣根が崩壊しつつある分野であるということだ.今やハードウェア技術は急激にコモディティ化しつつある.このため,インタラクション研究に大学などの研究機関に所属していなくても貢献できる可能性が増えている.その際,鍵になるのはやはり人が直観的にわかるということである.彼らがある意味で王道といえる研究発表に触れることが出来れば,研究に参加できるという時代にはまだなっていないものの,彼らに良いインスピレーションを与えることができる.
 その結果,インタラクション研究に直観の比重が高まっているということが観察される.つまり,面白いものを世に出せば良いという方向にシフトしている.それは,研究者の「こうすれば面白いものができる」という直観を重視しようという方向性とリンクしている.マス・コラボレーションによるモノづくりの民主化,つまりMake Cultureが,研究者にも一般人にも浸透しつつあるといえる.
 しかし,インタラクティブなモノに注目する場合,半分はデバイスであるかもしれないが,もう半分には間違いなく人間がいる.このため,人間のインタラクションやそれを取り巻く状況・環境というもの,つまり実践に注目しようというアプローチも海外では一定の位置を占めている.研究者の直観の中には,それに対する体系的なアプローチというものはないだろう.つまり,片手落ちになっている印象である.

 私は,人の直観で面白いものをつくっていくMake Cultureの熱狂的な信者であると同時に,実践の厳密な記述を試みることの熱狂的な信者でもある.その間でどうも自分の立ち位置を決めかねていた.
 ただし,時代の趨勢として,インタラクション研究者が直観に頼らず,全てをロジカルに明らかにしてうまくいく時代でもなくなってきているのは事実である.直観による制作物は,それ自体が状況となったり,人のインタラクションを変える.世はすでにそういったものであふれているし,その最先端も見に行けば見ることが出来る状況にある.その意味で,研究者と一般人という一段上の目線ではなく,研究や研究者,研究者の直観そのものが,人々のインタラクションの中に入り込みつつあると言える.

 その中で,実践の目線でインタラクションを研究する人々の立ち位置も変わりつつある.5月に行われたACM CHI2014では,実践の研究者による「ヘンな」研究がちらほら見られる.例えば参加型デザインなどの文脈で,自分自身がインタラクション技術を作る実践に入り込むアプローチは見直されつつあり,また「インタラクション技術を制作する」という営み自体を実践として捉えるアプローチもある.これらが最終的にインタラクション研究の枠内に入るのか,もしくは実践の研究者も実践の中に入り込んでいくのか,というのはまだわからない.個人的には,皆がヘンになって,この領域がメチャクチャになってほしい.

 最後に,ACM CHI2014での面白い論文をいくつか紹介する.

Breakdown, Obsolescence and Reuse: HCI and the Art of Repair
http://dl.acm.org/citation.cfm?id=2557332
http://sjackson.infosci.cornell.edu/Jackson&Kang_BreakdownObsolescenceReuse(CHI2014).pdf
壊れた機械などをアート作品にするプロジェクトのエスノグラフィーを通じて、Suchmanらが提示した人間と物体の境界の問題(エージェンシー)を見る。

Generating Implications for Design through Design Research
http://dl.acm.org/citation.cfm?id=2557357
http://www.cs.cmu.edu/~spdow/files/implicationsDesignResearch-CHI2014.pdf
「エスノグラフィーなどのデザインリサーチが、どうデザイナーに示唆を与えるか」をインタビュー。どうアイデアを思いつくかを類型化。

The Turn to Practice in HCI: Towards a Research Agenda
http://dl.acm.org/citation.cfm?id=2557111
「インタラクション」から「実践」へのHCI研究の視点の変化について。諸概念や議論をまとめている。