技術者について

明日が技術者としての最後の仕事になるかもしれないので,ここで私が知った技術者というものについて書く.
 技術者は,少なくとも現在存在しないものを作る.このため,最初の段階では作る道筋すらない場合もあれば,試行錯誤を繰り返しても条件を満たすものができないこともある.見かけ以上完成したものがあったとしても,それが問題点をはらんでいると思われる限り,完成だということはできない.そのようなことを全て考慮して始めて納期などを設定できる.
 このため,我々は常に現実的に実現可能なものにしか関わることができない.他の職業の方々なら好き勝手に物事を語ることもできるだろう.しかし我々の世界は狭く,自分が進んできた,手の届く道を手探りでやることしかない.所詮技術者は無力な人間である.
 このため,好きに物を言える立場の職業から比べたら技術者は下等な職業であり,下賤である.無力な我々は他の職業の方々から批判をされ,不満を告げられ,罵倒されるのが当然である.我々は自らを誇らない.社会の中で泥をかぶり,その無力さに蔑まれ,その結果何を得ることもない.我々は自らを誇らない.